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「ここは……?」
サラが目を覚ました場所は見知らぬところだった。
「目覚めたっすね。」
彼女は誰かいる気配に気づかずいきなり響いた声に驚いていた。
「だ、誰?」
「名乗る必要はない。あんたは人質っす。」
その声は何かを楽しんでいるような声だった。
「誰のための人質なんですの」
「それを聞いたらあんたは後悔するっすね。」
「いいから答えてください」
その声はどこか悲痛に聞こえた。
「しょうがないっすね。あんたはグレン・アシュティをおびき出すための人質っす。」
「えっ!!」
「だからあんたは後悔すると言ったっす。」
死神はこれはショックを受けたものだと思った。
しかし彼女の反応は以外なものだった。
「グレン様がここにいるんですの?よかった……生きていたんですね。」
彼女は本当に安堵したように優しく息をついた。
「聞いていたっすか?あんたは人質なんっすよ。あんたの大事な人を殺すための餌なんっすよ?」
「グレン様を殺すんですか?何故ですか!!」
その言葉を聞くと彼女は言葉遣いは変わらないが怒りを含む声になった。
「あんたには関係ないっす。」
何も感情を含まない目と声だった。
「どうしてもグレン様を殺すなら私を代わりに……」
彼女が最後まで言い終わる前に彼は彼女を気絶させた。
「身代わり、オイラはこれが一番嫌いなことっすよ。あんたも嘘でもそんなことを言うんじゃないっす」
しかしその言葉は誰にも届くことはなかった。
この静かな港町に朝がやって来た。
しかしその朝はひどく騒がしかった。
「大変大変だ〜!!」
叫びながら走って来たのはミラだった。
その騒がしさに起きていたレインはびっくりし隼人はまだ爆睡していた。
「ど、どうしたんだよ〜ミラ君」
たしょう眠かったみたいだかミラの大声で完璧に目が覚めたレインはびっくりしつつミラに聞いた。
「大変なんだ、グレンがいなくてサラちゃんの部屋の窓が粉々でサラちゃんもいなかったのそれとこんなのもあったの!」
圧倒されつつも理解をし、まずあったものを見るようにいった。
「あっ、うん。じゃあ読むね。」
グレン・アシュティへ
お前の婚約者である
サラは預かったっす。返してほしくば明日の午前九時に海岸の洞窟で待つっす。
なお、来なかった場合彼女の命はないっす。
死神より
「って書いてあるの」
「ってことはあの馬鹿一人でいったのかよ」
「うん、そうみたい……でも……」
「でも?どうしたんだい」
「書かれた手紙が気になって、いやまさか………」
ミラは少しのあいだ黙っていたがなにもなかったように口を開いた。
「やっぱり、いいや。隼人さんを起こしてグレンのとこ行こう」
「わかった、じゃあ俺が起こして来るよ」
レインはそれだけ言うと隼人が寝ているであろう部屋に向かった。
「ねぇ、これってもしかして……」
『もしかしなくてもやつだろう……しかし文面にも喋り方がでるなんて……』
「まあ、それっぽいって言えばそれっぽいけどね」
ミラは珍しく溜め息をついた。
「おっさん起きろ。」
「……………」
起きる気配はまるでなかった。
「起きろぉぉぉ」
パンチでもくらわそうかと腕を振り上げると隼人は急に目を覚ました。
「もう朝か……」
「遅いお目覚めで……」
「ああ、確かに遅いな」
隼人は時計をちらりと見た、時計の針は九時を回っていた。
「で、なにかあったのだろう?私と同室であるグレン君が起こしにこないからな」
レインはあったことを残らず話した。
「なるほどな、わかった。では向かおうか」
「せめて着替えろ……」
起きたばっかりだったので隼人はいつもの服じゃなかったのだ。
隼人は失礼と一言、言うとさっと着替えた。
「よし、改めて向かうぞ。おっさん」
「わかった。」
レインは隼人をつれて途中でミラを拾い、
グレンと死神が約束した場所に向かった。
時間は午前四時。港町はやはり静まりかえっていた。
グレンはそんな町を一生懸命に歩いていた。
「くそ!!今だけはこの体になったことを恨みたい……」
頑張って歩いていたがグレンの歩幅はかなり小さい。
「あの時だって決して大きかったわけでもないけど、今はそれよりも小さい……」
グレンはそれっきり黙ったまま黙々と歩いた。
午前七時。この港町はそんなに大きくはなかったがグレンの歩幅と宿が海岸から遠いということもあって。今、海岸に着いたのだ。
そしてそこからまた海岸の洞窟に向かったのだ。
(はぁ、はぁ……辛い。でも急がないと)
倒れそうになりながらも一歩また一歩と歩いて行く。
そして約束の時間の少し前、グレンは洞窟の前にいた。
「ここか……」
グレンはそう呟くと洞窟の中に足を踏み入れた。すると突然声がした。
「ようやく来たっすな。グレン・アシュティ。今は憐れなカエルの姿っすけどね」
死神の恰好は場違いな恰好だった。
紺のシルクハットに大きな鐘をつけていた。
服は全身紺色で金色の輪の刺繍がいたるところにあり、
上だけ着物みたいになっており下はぶわーっと広がっていた。
さらに鈴が服の先々についていた。
死神自身の髪も紺色でショートカット、前髪の多くが真ん中に集まっていた。
そんな風貌の死神にグレンは精一杯冷静に聞いた。
「お前が死神か!!サラは無事なのか!!」
「あの娘は無事っす、あんたが来たっすからね。どっちみちあの娘はあんたおびき出す餌っすからね、危害は加えてないよ」
死神は笑う。その笑みはなにか悪意を感じるものだった。
「そのかわりあんたはここに来た時点で無事じゃあ無くなるんっすけどね」
死神はくさりがまをふところから取り出しグレンに向けて構え、そして振り落とした。
「死ねぇ!!」
キィーン、金属と金属がぶつかり合う音が響く。
グレンもとっさに剣を抜いたのだった。
「っと、あぶねー。いきなり過ぎんだろうが!」
「うっさいっす!!!あんたは神殺しの大罪人っす。」
「神…殺し?なんだよそれなんなんだよ。」
「しらばっくれるなっす。あんたが…あんたがオイラの母ちゃんを殺したっす」
「なんだ…と……」
グレンは剣を落としそうになったがなんとか握りしめたまま死神の次の言葉をまった。
「忘れたとは言わせない……今から半年前、オイラの母ちゃんはこっちに来て殺された……」
「俺はそんなことしてない!!」
「そんなこと信じられないっす!!オイラはあんたが殺したと聞いたんっすよ!!」
喋りながらも死神は鎌を振り落とし続ける。
「そんなこと誰が言ったんだ!!」
「そんなことあんたに関係なんかないっす」
死神はそう叫びながらグレンの剣を勢いよく弾いた。
「……っ、しまった」
剣はカランと音をたて床に落ちた。
「これで終わりっすね。憐れなカエル君」
死神は笑みを浮かべグレンの首に鎌をかけた。
(俺も終わりか……ごめんな、サラ。俺なんかを追い掛けて危険な目に合わせて。ミラ、お前にカエルにされたのはショックだったけどお前との旅は楽しかったぜ……レイン、両親が見つかるといいな……最後にレイモンド、悪い俺ももうすぐそっちに行くことになりそうだ、お前のぶんも長く生きるつもりだったんだけどな……)
グレンは諦めたような顔で俯いていた。実際諦めていたのかもしれなかった。
「あんたに神の裁きを与える」
死神はなぜかやっと声を出したような弱々しい声でグレンの首を落とそうと力を込めた。
「待った!!」
そんな時、誰かが叫んだ。その声を聞いた時、死神は動きを止めた。
「ミラっすか……」
「そうだよ、ルト」
「なんのようっすか?オイラは仕事中っす」
『その仕事について話しがある。お前たち死神は迷える魂を送ることだけが仕事じゃないのか?なぜグレンを殺そうとする。』
「それは光の仕事っす、闇の仕事は神殺しや世界を危機に陥れうるものの抹消……それがオイラたち死神の仕事っすよ。ミラージュ」
『その名を呼ぶのか、ルト』
明らかに困惑の色を見せた彼に死神は薄く笑う。
「ああ、呼ぶっすよ。オイラの仕事を邪魔されたくないっすから」
『そうか、だが私が止めるのをやめたところでミラが止める決まっている』
「そうっすね……でもここでこのまま首をはねたらそれも無理っすね!!」
『やめろ!!!』
止まっていた動きを再開し鎌をおもいっきりひいた。
しかしグレンの首はとばなかった。
あと一歩のところでレインにくさりがまを弾き飛ばされたのだ。
「ふぅ〜間一髪セーフ」
「なっ、邪魔を……」
死神は最後まで言えなかった。
「形成逆転だな、死神」
それは死神の喉元に隼人が刀を近づけていたからだ。
「降参っす。」
死神は両手を上げてひらひらと振った。
「そうか、なら、持っている武器を全部出してもらおうか」
「わかったっす」
死神は次々といろいろな武器を出していった。
最後の一個になるまでだいぶかかってしまった。
隼人はまだ喉元に刀を近づけていた。
「なんのためにグレン君を襲った?」
死神は恐怖の色をほとんど見せていなかった。
「……復讐……そのためっすよ。」
「復讐だと?」
明らかにみんなは困惑している。
「何も知らないっすね。一言で言うとあそこにいる、グレン・アシュティがオイラの母ちゃんを殺したやつっす。だからあいつを殺すことでオイラの復讐が果たされるっす。」
「そ、そんな……だってルトのお母様は死体も見つかってもいないのに……」
「そうっすよ。だからずっと生きていると信じてた。でも、ある日任務と一緒に一個の小包が届いたんっすよ。ミラ」
口調こそ真剣さが足りないが声の調子は真剣そのものだった。
「手紙の内容はこうだったっす。」
君の母親は殺された。君の母親を殺したのはグレン・アシュティという男だ。
母親の死が信じられないというならば同封した物を見てみるとわかるだろう。
「そう、書いてあったっす。そして同封されていたものはオイラの母ちゃんのくさりがまっす……」
「だから信じたのか?そんなのでグレンが殺したと断定なんかできるわけがない!」
「殺してないと断言できる理由もないっす!!」
「グレンが殺しなんかするわけがない」
「それはあんたらの主観から言えることっすよ。現に”殺した”っというところであいつは一瞬だけ反応したっす」
みんなはグレンを見た。
「グレン?」
「みんな、ごめん。人を殺したのと同じことをしているんだ……」
「でもあれはもう……」
「違う、違うんだ。あの人じゃない、もっと身近な人で……」
「まさか……」
レインは静かに息を呑む。
「お前の思っているとおりだと思うよ、レイン。俺は殺したも同然のことをしてしまったんだ、親友であるレイモンド・プリストファーに……」